2005年6月以降、海外で一緒に生活していたペットの犬や猫と一緒に帰国できないケースが多発する可能性がある。政府が狂犬病防止策を強化した結果、海外から日本に来る犬や猫には、必ずマイクロチップを埋め込むことが義務化されるためだ。条件を満たさない犬や猫は帰国後、飼い主から離され、最長180日間の「係留検査」を受ける可能性がある。
新制度は2004年11月に施行され、現在は経過措置として旧制度と併用されているが、2005年6月からは完全実施されている。
従来の制度では海外で狂犬病の予防接種を1回済ませれば日本国内に連れ帰ることができた。新制度では、まず個体識別用のマイクロチップを埋め込まなくてはならない。更に、予防接種が2回になるうえ、日本政府が指定する動物病院で狂犬病に対する抗体の有無を確認することが義務化される。これらの条件をクリアしないと、日本到着後、全国11カ所の「係留施設」で最長180日間、狂犬病が発症しないかどうか検査を受けるとされている。「発生がない」と日本政府が認めた英国や豪州など13カ国・地域を除く大半の国で、このような措置がとられる。
ただ、マイクロチップは中国やロシアなどでは入手が難しい。指定病院は米国でも1カ所だけで、病院がない国も多い。海外に住む日本人から外務省に対して「これではペットを連れて帰れない」などの苦情や質問が相次いで寄せられている。
外務省は、動物の検疫を担当する農水省に対して「住んでいる国によっては実行が極めて困難。配慮が必要だ」として、完全実施の延期を要請した。しかし、農水省は「先進国で日本の検疫は緩やかな方だ」(同省幹部)と反論。日本では狂犬病患者は長く出ていないが、中国などアジア各国では流行が見られるとして「水際対策」の必要性を強調した。
両省間の調整の結果、問題があれば今秋にも制度を見直すことになったが、今年6月完全実施の方針は動かなかった。